読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

頭の中の感想置き場

映画、アニメを中心に感想や想いを綴っていきます

~厳格なプロフェッショナルは男の美学~「トランスポーター」ネタバレレビュー

映画レビュー

f:id:marion_eigazuke:20151004132203j:plain

 

作品概要

「契約厳守、名は伏せる、依頼品は開けない」という厳格な3つのルールを課して一流の仕事をこなすプロの運び屋<トランスポーター>を営む男が、やむを得ず依頼品を開けてしまい、依頼品である東洋の美女と共に巨大な悪の計画に巻き込まれてしまうアクション映画。出演はジェイソン・ステイサムスー・チー、マット・シュルツ、フランソワ・ベルレアン、リック・ヤンなど。監督は「グランド・イリュージョン」のレイ・レテリエ。製作、脚本を「Taxi」シリーズのリュック・ベッソンが担当。

 

 

点数:4.0点(5.0満点、0.5刻み)

※ネタバレを含みますので読まれる際はご注意ください。

 

 

黒いスーツを身にまとい厳格に仕事を成し遂げるプロの美学に男らしさのツボを突かれ、ジェイソン・ステイサムの華麗なる体技に惚れ惚れする…まさに男心をくすぐる映画だ。

 

時に人は映画に出てくる裏の世界で活躍する厳格なプロフェッショナルやアウトローに憧れることがある。今作の主人公であるフランク・マーティンもそんな厳格なプロフェッショナルを体現したキャラクターの一人である。「契約厳守、名は伏せる、依頼品は開けない」という3つの厳格なルールのもとに、どんな依頼品や荷物でも運び届けてしまう一流の運び屋で、愛車はナンバープレートを自由に変えることができる黒いBMW735i、黒いスーツと手袋を身に着け、軍隊仕込みの華麗な格闘術で相手を一瞬倒す…まずこの設定を聞いただけ心ときめかないだろうか?無骨でたくましく、かっこいい愛車とスーツ、厳格で仕事は一流…リュック・ベッソンは的確に男心をくすぐる術を心得ている。というか彼自身そういう設定が大好きなのだろう。

 

フランクのプロフェッショナルな仕事ぶりは早速冒頭から描かれる。銀行強盗を逃がすミッションでは当初の契約人数と違う強盗団に対して、契約人数を計算したガソリンの量やサスペンションの設定をしていることや、自分以外にはエンジンがかからないなどクールに、理路整然と契約通りでなければならない理由を語り、裏道、逆走、華麗なコーナリング、アクロバティックなテクニックを使って警察を巻く場面はこれぞプロフェッショナルと感じるはずだ。

 

だがある雇い主からの依頼品=中国系企業の社長令嬢が厳格なフランクの調子が狂わせてしまう。依頼品の正体を知ってしまった彼は愛車を爆破され、コート・ダジュールに構えるオシャレな自宅も襲撃されてしまう。彼女の口から出たのは自分の父とある組織のボスが人身売買をしているという告白だった。 フランクが課している3つのルールを見れば分かるが基本的に自分の命に危険が及びそうなことや面倒な事件には関わらないようにしているフランクだが、美女の涙の前に遂に立ち上がるのであった。厳格なアウトローと彼を惑わすヒロインはやはりセットだ。うん、やはりツボを分かっている。

 

そして忘れてはならないのがかっこいいアクションだ。アクション監督であるコリー・ユンのアクションは「まとめて絡ませて蹴り上げる」ことに一貫している。武器を持った敵を壁のシャンデリアを使って武器を絡ませたり、自分の来ていた長袖シャツを敵の首や腕を絡ませてジェイソン・ステイサムの長い足で蹴り上げる。彼の華麗な身のこなしが生きるアクションだ。他にも回し蹴りなどの蹴り技をビシッとメリハリをつけたカットや上半身裸でムキムキな肉体を見せながらの立ち回りなど華麗でたくましい演出が際立つ。またオイルまみれでつるつるな状況下を利用して相手をなぎ倒したり、コンテナの扉を使って何人もの相手を蹴り上げたりとアクションのアイディアも豊富で面白い。ラストのコンテナトレーラー奪取シーンも手に汗握る展開だ。

 

ただストーリーや映像は安定のヨーロッパ・コープ映画といえばそうなる。運び屋としての仕事っぽい見せ所は冒頭だけだし、肝心のアクロバティックなドライビングシーンはあっさりカットを割って何が起こったか分かりにくい、唐突に始まるヒロインとのラブシーン、ご都合主義は目立つなど予算の少なさや大雑把さはお決まりのことのように思える。また冒頭のクレジットの文字はマトリックスっぽいなど無意図で節操ないオマージュなどもいつも通りだ。ただ自分はこの欠点をフランク・マーティンというキャラクターの魅力がカバーしていると取る。

 

役者陣ではやはりジェイソン・ステイサムが素晴らしい。たくましい肉体と華麗な身体能力はもちろん低いボイスや禿げあがった頭が無骨さを際立てる。彼でなければここまで見ごたえのあるものにはならなかっただろう。スー・チーは自由奔放な魅力が印象的でマット・シュルツはいかつい人相で悪役を演じる。ちなみにマット・シュルツ演じる悪役の名前に「ウォール・ストリート」と名付けるリュック・ベッソンのセンスは馬鹿馬鹿しくて最高である(褒めてます)。そしてフランソワ・ベルレアンの穏やかそうで怖い雰囲気が刑事役に見事にハマる。あのフランス人おっさん特有の雰囲気は個人的に大好きだ。

 

乱発されているリュック・ベッソン印のアウトローなプロフェッショナルものや中二病アクションだが、ジェイソン・ステイサムの魅力が合わさることでまさかの化学反応が巻き起こる。相変わらず大雑把なヨーロッパ・コープ映画ではあるが、今作のように時々とんでもない快作を作り上げるのだからやっぱり侮れないなと改めて感じた。