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頭の中の感想置き場

映画、アニメを中心に感想や想いを綴っていきます

僕は気持ちを伝えられない主人公が好きだ。~ムービーウォッチメン「ここさけ評」を聞いて~

毎週土曜日22時からTBSラジオで放送されている「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」の名物コーナー「週刊映画時評 ムービーウォッチメン」で「心が叫びたがってるんだ。」が取り上げられた。

 

 

www.tbsradio.jp

 

宇多丸師匠は憧れの人だ。豊富な映画の知識はもちろん、その映画に対してきちんとよかった部分や細かい演出まで分かりやすく評論し、自分でも全く気付かなかったような的確な指摘もあっていつも感心させられる。また時には歯に衣着せぬ厳しい指摘もきちんと発言していく…そんな忌憚なく評論するスタイルには唸らされる。自分のレビューなんてまだまだ浅はかなものだ。

 

で今回、宇多丸師匠は「心が叫びたがってるんだ。」をどのようなテンションで評したのかというと…はっきり言ってテンションはかなり低めだった。酷評とは言わないがかなり苦言の多い批評だった。

 

レビュー読んでもらえると分かると思うが僕はここさけ大絶賛派なのだが、そんな僕から見ても宇多丸師匠の批評は的確な指摘が多かったと思う。特に終盤、主人公である成瀬順と彼女を心配する坂上拓実が気持ちを言葉で伝える場面で、親の不満や悲しみが一切触れられず結局色恋沙汰に矮小化しているのではないかという指摘は思わず膝を打った。確かにあの場面では親への不満をぶちまけるべきだと思うし、もっと親へのエピソードは入れるべきだと思う。個人的に「バケモノの子」批評のときもこれぐらい忌憚なくやってほしかったけど、それは仕方ないか。

 

marion-eigazuke.hatenablog.com

 

だが批評を聞いていて引っかかる部分があった。それは主人公の成瀬順のことを「しゃべれないだけで、感情表現は豊かに見えるし、メールを介した筆談なら普通にコミュニケーションできるどころか饒舌だから、別にコミュ症じゃないのでは?しゃべれないけどコミュニケーション取れてるから問題ないのでは?物語的に救われる余地が実はあんまりないように見える」と言うのである。僕はこれを聞いて単に言葉のあやだとしても今回の批評は鋭い指摘もあるけど相容れないものがあるなと感じた。

 

「言葉がしゃべれない」ことを「物語的に救われる余地がない」とするってどうなのだろうか。人は「インサイド・ヘッド」のように色彩豊かな感情や様々な考え方や価値観、想いを胸に秘めている…そしてそれを表現する、伝える手段というのも様々だ。手紙でもいいしブログでもいい、言葉を使うなら電話やラジオでもいい…でも恐らく一番原始的で普遍的、そして温もりを感じるのは「伝えたい人に直接会って言葉を話す」ことだと思う。成瀬順はそれを封じられているのだ。僕は普通の少女が目の前にいる気持ちを伝えたい人に言葉で伝えることができない状況を「物語的に救われる余地がない」とし、些細なこととして捉えるのはいくらなんでもひどいのではと思ってしまった。誰もが言葉をしゃべれるのに自分だけしゃべれないという疎外感や孤独は救われる余地がないのだろうか?誰もが「じゃあ私、筆談でもいいや」なんて開き直れるわけじゃない。

 

なぜここまでムキになって衝動的にこんな記事書いているのかというと、自分自身傷つくことを恐れて気持ちを伝えられないことに悶々としていたことがあったからこそ、同じように悩んでいる成瀬順に強く思い入れているからだと思う。思えば「思い出のマーニー」の杏奈にもかなり自分を重ねて見ていた。二人とも伝えたいことはいっぱいあるし、もっと打ち解けたい…でも傷つくことを恐れて萎縮して悶々としてしまうこのどうしようもないループに苦しむ。そして紆余曲折あって自分を受け入れて解放していく…自分も未だにそんなどうしようもないループに陥りかけたり、かつてのことを思い出したりするし、たとえどんなに簡単に気持ちを伝えるツールがあってもずっと同じ悩みを持ち続けると思う。そして現実では映画のようにきれいに解放されたりはなかなかない、だからこそ気持ちが伝えられない主人公達に思い入れてしまうのだ。確かに些細なことかもしれないけど、そこは簡単に片づけられたくないのだ。

 

とここまで尊敬する宇多丸師匠に反抗するような内容の記事を書いてしまって炎上とかしたらどうしようとか気が気でないのだが、別にこの評論をきっかけに宇多丸師匠が嫌いになったとかはないし、むしろこんな独りよがりな被害妄想みたいな内容で絡んですいませんと謝りたい気分だ。本当にすいません(汗)でも僕はやっぱり気持ちを伝えられない主人公が好きだ。

 

ちなみに「言葉がしゃべれない主人公」で誰もが連想したであろう「食堂かたつむり」は未見です(笑)