【2016年ベストテン&ワーストテン企画】2016年映画サントラベストテン
2016年も1月中旬まで終わってしまいました…早いなぁ…というわけで2016年ベストテン&ワーストテン企画第3弾は2016年サントラベストテンです。といっても実は積みサントラが大量に発生してしまって2016年はあまりサントラを聞けなかったですね。Spotifyのおかげで聞くサントラの種類とかとても増えたはずなんですが、忙しかったり、ビルボードチャートで人気の曲を聞いていたりと、完全に怠けてましたね。なので今年は量は少ないながらも選りすぐりのお気に入りサントラを選んでみました。
まず今回のベストテンのレギュレーションについてですが、この条件を満たした映画サントラでベストテン決めたいと思います。
- 2016年1月から2016年12月に劇場公開された映画のサントラ
- 2016年1月から2016年12月に発売されたディスクスルー映画のサントラ
- 2016年1月から2016年12月に配信されたNetflixで配信されたNetflix製作の映画のサントラ
またサントラベストテンでは更に以下のルールを適用します。
- 劇伴、スコアのみを対象とする。
- 1作曲家につき1作品しかベストテンに入れることはできない(連名は別カウント)
- コンピレーションアルバムや、歌物は含めない(例: シング・ストリート)
- 映画自体を鑑賞していなくても、サントラをきちんと聞いている場合はランキングに含めることができる。
- スコアを聞いた媒体は問わない。
ちなみに今回のサントラベストテンでは40作品が選考対象となりました。それでは第10位から発表していきたいと思います。
第10位:バッドマン VS スーパーマン ジャスティスの誕生(ハンス・ジマー&ジャンキーXL)
なんといっても今作1番の名場面で流れるワンダーウーマンのテーマこと「Is She With You?」が頭から離れない。エレキギターとド派手なリズム群が織りなす圧倒的な勢いに誰もが驚いたはずだ。他にも迫力のあるコーラス群とオーケストラを生かしたバットマンのテーマや、「マン・オブ・スティール」から続投しているスーパーマンのテーマなど肝となるヒーロー達のメインテーマがとにかくかっこいい。ハンス・ジマーは今作でヒーロー映画のスコア担当を最後にするらしいのでそういう意味でも貴重だ。
第9位:キング・オブ・エジプト(マルコ・ベルトラミ)
僕は「ハムナプトラ」シリーズのようなエジプトっぽいオーケストラスコアが大好きでたまらないのだが、今作のスコアも見事に僕の好みを満たしてくれるスコアで何度もヘビロテして聞いていた。プロローグ部分では雄大でエスニック風なメロディをオーケストラで響かせ、ザヤとベックのテーマではクラリネットの優しい音色を中心に響かせる。そしてアクションシーンではマルコ・ベルトラミらしい豪快な金管とパーカッションで盛り上げてくれる。とても豪華で満足度の高いスコアだと思った。
第8位: ペット(アレクサンドル・デスプラ)
アレクサンドル・デスプラのスコアといえば文芸作品に似合う品のあるスコアか「ガーディアンズ 伝説の勇者たち」のような雄大でメロディアスなスコアというイメージがあるのだけど、今作のスコアではそれまでのイメージとは打って変わってジャズ要素をふんだんに散りばめたワクワクするスコアを聞かせてくれる。ジャズが似合うニューヨークの街並みとカートゥーンアニメらしいコミカルさをアレクサンドル・デスプラらしい上品でメロディアスなスコアで包み込んだ心地よいスコアだ。
第7位:ヘイトフル・エイト
実は今作で初めてエンニオ・モリコーネのスコアをきちんと聞いたのだが、まぁなんと美しくて不気味な味わいを残すスコアだろうか。徐々に楽器が増えてくるたびに不安の厚みが増していく様は見事であり、冒頭でじっくりと長い時間をかけて描かれるオープニングでその後に起こる不吉な事態を予感させる。その後も不気味さを煽り続けるスコアの連続でとても聞きごたえのあるスコアだ。これを機にエンニオ・モリコーネが担当したサントラをもっと聞き漁ってみようと思った。
第6位:ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー(マイケル・ジアッキーノ)
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー オリジナル・サウンドトラック
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担当予定だったアレクサンドル・デスプラが再撮影によってリジェクトされるなど不安なニュースばかり聞こえてきたが、マイケル・ジアッキーノは「スーパー8」以上にジョン・ウィリアムズ節をトレースし、現代の映画らしい編集に耐えうる見事なスコアを作り上げた。これまで使われてきたモチーフを的確に使用しつつ、ジンやクレニック、希望など新しいモチーフで感動を盛り上げたマイケル・ジアッキーノは、間違いなく今後のスター・ウォーズの音楽を彩っていくはずだ。
第5位:スティーブ・ジョブズ(ダニエル・ペンバートン)
3つの時代、3つのプレゼンの舞台裏を通じて描かれるスティーブ・ジョブズという人間を描くためにダニエル・ペンバートンは趣向を凝らしたスコアを聞かせる。初期のコンピュータを連想するような電子音やコンサートの始まりを予感させるチューニングパート、シェイクスピア劇のようなオペラ…まるで機械とオーケストラを同時に指揮するマエストロのようであり、自らをオーケストラの指揮者と例えるスティーブ・ジョブズにも重なって見えるのだった。
第4位:映画 聲の形(牛尾憲輔)
映画 聲の形 オリジナル・サウンドトラック a shape of light[形態A]
- アーティスト: 牛尾憲輔
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とにかく今作のスコアは「繊細」の一言に尽きる。どこかポップなアンビエントスコアと美しいピアノスコアは対話に苦しむ登場人物達の残酷な一面を的確に切り取ると同時に優しく包み込む。そしてピアノから発せられるノイズや無音、水中の中にいるようなくぐもった音は、断絶してしまった想いやありのままの自分の象徴として重なってくる…「聞こえる」という作品のテーマに合致していると言える。美しいメロディだけでなくノイズもまた愛おしく感じるスコアだ。
第3位:キャロル(カーター・バーウェル)
2016年で最も美しいメロディを聞かせてくれたスコアは?と聞かれたら、間違いなくカーター・バーウェルによる今作のスコアを挙げると思う。彼女達の濃密な愛情と彼女達に待ち受ける困難な道を端的示す美しくも悲しいメロディは何度も聞き返しても鳥肌が立つ。ピアノとストリングスというオーソドックスな構成だからこそ、この情的なメロディが染みるというものである。正直カーター・バーウェルという作曲家に対してそれほど思い入れはなかったのだが、今作によって深い思い入れが生まれたのであった。
今作では伊福部昭のオリジナルスコアも沢山使われているが、鷺巣詩郎による荘厳なスコアも忘れてはいけない。初めて日本に異形が浸食していく様で流れるPersecution of the massesや絶望的なまでに美しく描かれる放射熱線シーンで流れるWho Will Knowなど、まるでオペラ悲劇を見ているかのような厳かさに包まれる。この圧倒的な存在感際立たせるスコアこそ新たに蘇ったゴジラと崩壊しつつある日本に相応しいといえる。また「新世紀エヴァンゲリオン」のサンプリングにもニヤリとさせられた。
第1位:スポットライト 世紀のスクープ(ハワード・ショア)
Spotlight (Original Motion Picture Soundtrack)
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隠された事実をつまびらかにする記者達の静かな戦いを描く今作において静かに盛り上げるハワード・ショアのスコアがとても重要な要素だ。ただ地道に仕事をこなしていく記者達の姿をピアノとシンセサイザーでミニマルに切り取るスコアは決して無駄がなく、彼らの内なる情熱をきちんと表現している。決して大げさに盛り上げることなく、静かに映画や役者を盛り立てることに徹し、それでいて静かに耳に残る印象的なスコア…個人的にかなり精度の高いスコアだと感じた。
というわけで今年のサントラベストテンは以下のようになりました。
- スポットライト 世紀のスクープ(ハワード・ショア)
- シン・ゴジラ(鷺巣詩郎)
- キャロル(カーター・バーウェル)
- 映画 聲の形(牛尾憲輔)
- スティーブ・ジョブズ(ダニエル・ペンバートン)
- ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー(マイケル・ジアッキーノ)
- ヘイトフル・エイト(エンニオ・モリコーネ)
- ペット(アレクサンドル・デスプラ)
- キング・オブ・エジプト(マルコ・ベルトラミ)
- バッドマン VS スーパーマン ジャスティスの誕生(ハンス・ジマー&ジャンキーXL)
惜しくも選外となったサントラは以下の通りです。
- ボーダーライン(ヨハン・ヨハンソン)
- ブリッジ・オブ・スパイ(トーマス・ニューマン)
- 後妻業の女(羽岡佳)
- クリムゾン・ピーク(フェルナンド・ベラスケス)
- 高慢と偏見とゾンビ(フェルナンド・ベラスケス)
- 白鯨との闘い(ロケ・バニョス)
- デッドプール(ジャンキーXL)
- ザ・ウォーク(アラン・シルヴェストリ)
- リリーのすべて(アレクサンドル・デスプラ)
- レヴェナント 蘇えりし者(坂本龍一&アルヴァ・ノト)
- 怒り(坂本龍一)
- ズートピア(マイケル・ジアッキーノ)
- スター・トレック BEYOND(マイケル・ジアッキーノ)
- 10 クローバーフィールド・レーン(ベアー・マクレアリー)
- グランド・イリュージョン 見破られたトリック(ブライアン・タイラー)
- ジャングル・ブック(ジョン・デブニー)
- Mr. ホームズ 名探偵最後の事件(カーター・バーウェル)
- 何者(中田ヤスタカ)
- スーサイト・スクワッド(スティーヴン・プライス)
- インフェルノ(ハンス・ジマー)
- シビル・ウォー キャプテン・アメリカ(ヘンリー・ジャックマン)
- ジャック・リーチャー NEVER GO BACK(ヘンリー・ジャックマン)
- ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(ジェームズ・ニュートン・ハワード)
- BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(ジョン・ウィリアムズ)
今年のサントラベストテンは去年と比べると少々地味に見えますね…なんとなくですけど洋画大作系の不調がサントラにもきていたのかもとベストテンを作りながら思いました。それとこれまで邦画のサントラはあまり聞かなかったのですが、今年はいつも以上に多く聞きました。印象的な邦画が多く登場してくれたおかげですね。2017年も邦画サントラをきちんと聞きたいと思います。
…というわけで2016年映画サントラベストテンはここまでです。次回は2016年アニメベストテン&ワーストワンの予定です…ん?ワーストワン?その理由は次回きちんと…。早く書いてしまわないとアカデミー賞ノミネーション記事書けないんでちょっと頑張ります。