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~落ちこぼれ達が作り出す最高のパレード~「リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」ネタバレレビュー

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作品概要

子供の頃に見た魔法ショーに心を奪われ、憧れの魔女学校に入学するも相変わらず空回りばかりな落ちこぼれ魔女見習いアッコとその親友達が、今度は他の落ちこぼれ魔女見習い達と共にふもとの街で開催されるパレードを成功させようと奮闘する姿を描く「リトルウィッチアカデミア」の続編。出演は潘めぐみ、折笠富美子村瀬迪与日笠陽子、志田有彩、村川梨衣上田麗奈青山桐子日高のり子など。監督は前作に引き続き吉成曜

 

 

点数:4.5点(5.0点満点、0.5刻み)

※ネタバレを含みますので読まれる方はご注意ください

 

 

前作同様にアニメ的快感や躍動感が気持ちいいのはもちろんのこと、短編では描き切れなかった登場人物達の成長やドラマに深みが増して、キャラクターの新たな魅力が輝きを放っている正統派な続編だ。

 

前作にあたる短編では表情の豊かさや躍動感などジャパニメーションカートゥーンアニメの折衷というアニメ的快感に特化した1本だったが、短編だったこともあってか大きくストーリーを展開させることはあまりできなかった。でも今作ではアニメ的快感もしっかり感じさせつつ、ストーリーの面で大きく進歩させようという気概が感じられる。中編にまで尺が長くなった恩恵だろう。

 

今作で展開されるストーリーには2つの面白味がある。1つは落ちこぼれのレッテルを貼られた魔女見習い達が一つの大きなものを作り上げていくという一種の逆転劇的な展開だ。前作でシャイニィシャリオの魔法の杖を使って封印されたドラゴンを見事に退治した主人公のアッコと親友のロッテ、スーシィだったが、相変わらず授業でミスしてばかりで他にも様々なトラブルを起こし続けてばかりだった。そんな彼女達にふもとの村で行われる魔女狩りをモチーフにしたパレードを同じく落ちこぼれ魔女のダンスが得意なアマンダ、メカに強いコンスタンツェ、食いしん坊のヤスミンカと共に成功させなければ落第となってしまうというペナルティが課せられる。アッコはカビ臭い儀式より魔女の魅力が伝わるような明るくて豪華なパレードにしようと提案するのだが、彼女は勝手に役割を決めてその計画をどんどん推し進めてしまう。もちろん個性的なメンバーばかりでなかなかまとまらないし、アッコとスーシィはお互いに我が強すぎるために言い合いばかり…アッコに勝手にプロジェクトマネージャーに任命されたロッテは頭がパニック状態である。

 

そんな学校では落ちこぼれで、街でパレードの買い出しに出かけたら魔女をバカにする子供達からトマトを投げつけられる負け犬達が個性を生かしてパレードを作り上げる様は見ていてアツくなる。そしてたまたま重なってしまった大魔女に封印された巨人の復活というトラブルに見舞われるものの、アーシュラ先生の機転を利かせた演出やライバルのダイアナの助けもあって、アッコが憧れていたシャイニィシャリオの魔法ショーを見ているような最高のパレードに変貌する。ラストにはみんなの応援や信じる心をパワーにアッコとロッテ、スーシィはシャイニィシャリオの格好に扮して必殺弓シャイニィアルクを使って無効化魔法を決めるというのもアツい。しかもその成長ぶりをアーシェラ先生(=シャイニィシャリオ)がきちんと目撃しているわけだ。短編以上にアッコ達の成長に説得力が増しているといえるだろう。

 

もう一つの面白味は、アッコとロッテ、スーシィの友情物語だ。とても元気で明るいがどんどん猪突猛進で突っ走ってしまうアッコと、毒々しいキノコであやしい薬品を作ってはアッコを実験台にする毒舌なスーシィ、そんな2人と比べて大人しく心優しい性格で綺麗な歌声の持ち主のロッテの3人トリオは言い争いばかりだけど最高の親友だ。だがアッコの思い付きでどんどん行動してしまって誰の意見も聞かない猪突猛進ぶりやズケズケと入り込む空気の読めなさが災いとなり、遂にはロッテを怒らせてしまう。「ダメならダメって言ってくれないと分かんないし!」というアッコをスーシィは冷静にたしなめるが、核心を突かれたアッコはついにスーシィとも絶交してしまう。確かにアッコは勝手にパレードの内容を決めて、誰の意見も聞かずに突っ走って他人任せだったのだから怒られても仕方ない。

 

だがダイアナの嫌味のおかげ?でアッコは反省し、シャイニィシャリオの杖に魔力を貯め込むという奇策を考え付き、目標のために一人で演出やパレードを立案する。そして巨人復活という最大のピンチにアッコの頑張りをこっそり見ていた二人もそれぞれの得意分野で助けにやってくる、ロッテはアッコのために作ったシャイニィシャリオの帽子を手にもって…。それぞれの言葉で自分勝手で猪突猛進ばかりだけどそんなアッコが好きだと打ち明ける場面はちょっと目がウルっとさせられた。

 

もちろん前作同様アニメ的快感も素晴らしい。表情豊かなキャラクターや魔法のエフェクトはまるで踊るようにイキイキと動き、可愛らしくデフォルメされたアニメ的な動きがまた心地よい。アッコがひとりでパレードの準備をする場面をテンポよく見せる場面などの演出の無駄のなさもいいし、パレードや巨人とのバトルではシャイニィシャリオの杖を巡って奪い合う子供達や魔女たちのパス回しなど迫力満点で惚れ惚れする。また時折カートゥーンアニメ調のデザインが出てくる、アッコの動きに合わせてコンスタンツェが作ったロボットも動くなど小ネタもあっていちいち面白い。ただ短編の頃に比べると線の揺らぎというかダイナミックさがそがれ、少々落ち着いた感があるような気もする。たぶん短編の時より粗をなくそうとかっちり作ろうとしているのかもしれないし、ただ自分が見慣れてしまったからかもしれないので一概には言えないが、自分は短編の時の線が荒々しくどこか揺らぎがあるようなダイナミックさが好きだったので少し勿体ないなと感じた。

 

あとないものねだりというか言ってもしょうがない部分かもしれないが、もっと描くべきキャラクターのドラマがあまり描けていないようにも感じた。アッコ、ロッテ、スーシィの関係性を描くのはもちろんいいのだが、やはりアッコとダイアナのライバル関係ももっと深く描いてもよかったのではと感じる。ダイアナの嫌味がきっかけでアッコは大切なことに気づくというのはいいのだが、取って付けたような印象はあるしもっと因縁や複雑な思いみたいなのがあってもいいと思う。またアマンダ、コンスタンツェ、ヤスミンカという新キャラクター達は頑張って物語に絡ませようとしているのは分かるのだがどうしても飾りのように見えてしまっている。そこら辺は次の課題だと思う。

 

前作のレビューのときには書かなかったが声優陣の演技も見物だ。潘めぐみの元気一杯で感情豊かな演技や、折笠富美子のきれいな歌声、村瀬迪与の独特な声質、日笠陽子の気品あふれる演技、日高のり子の落ち着きのある演技は素晴らしい。豪華なメンバーが揃っているだけあるなと感じさせる。そして大島ミチルのスコアも安定して美しいし、大原ゆい子が歌う主題歌「Magic Parade」の後味も大変よい。しかもその主題歌が流れるエンドロールではキックスターターで協力してくれたユーザーの名前がズラッと並ぶのだ。このシリーズが愛されている証だろう。

 

短編から中編へと尺だけでなく内容や完成度も着実に向上されているのがはっきり見て取れる。「キルラキル」といい今作といい、TRIGGER制作のアニメーションはいつもいつも見逃せないなと改めて感じさせてくれる。次のステップではもちろん長編として、今度はアッコとダイアナの関係性にフォーカスを当ててほしいなと個人的には思う。

 

前作のレビューはこちら

marion-eigazuke.hatenablog.com