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~探求心を持って走らなければ生き残れない~「メイズ・ランナー」ネタバレレビュー

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作品概要

突然謎の巨大な迷路に閉じ込められた若者たちが必死に迷路からの脱出を試み、謎の真相を解き明かしていく同名のヤングアダルト小説を映画化したメイズ・ランナーシリーズ第1作。出演はディラン・オブライエン、カヤ・スコデラーリオ、ウィル・ポールター、トーマス・サングスター、キー・ホン・リー、アムル・アミーン、ブレイク・クーパー、パトリシア・クラークソンなど。監督はこれが初監督作となるウェス・ボール。

 

 

点数:4.0点(5.0点満点、0.5刻み)

※ネタバレを含みますので読まれる方はご注意ください

 

 

とにかくジェットコースターのような話の唐突さや疾走感が、異常な状況下や若手役者陣のフレッシュさと合わさってなかなか切迫感があってわくわくするし、甘ったるいヌルさもない…これはなかなか楽しめる1作だ。

 

物語はいきなり主人公のトーマスが迷路のスタート地点である大地に運ばれる場面からスタートし、まったく理由や意図も分からぬまま、既にいる他の若者たちに従ってその世界のルールを教えられて覚えていく。この始まり方は観客と主人公の視点が同じなのですごく入り込みやすく、しかもかなりハイペースで物語が進んでいくため、息つく暇もなく楽しめる。

 

そんなトーマスはこの手の話でよく見るような実は特別な秘密を持った人物(主人公の正体は迷宮に若者を送り続けていた組織WCKDの一員だったのだが、なぜか迷宮に送られてしまう。記憶喪失のせいでその理由は全く覚えていない)なのだが、好奇心旺盛であること、探求心が強いことが物語を大きく動かしていく。「どうやったらこの迷路を脱出できるのか?この迷路はどういう構造なのだろうか?」とどんどん首を突っ込んでいき、何も知らないからこそどんどん知りたい、脱出する方法はないかと考えてとにかく走って謎やギミックに飛び込んでいく。そして秘密の一端にたどり着きはじめ、主人公のことや秘密を知っている少女が現れたことで更に加速していく。いつもなら夜に閉まるはずの扉が解放され、モンスター達が居住区に攻め込み、壊滅状態になってしまうのである。加速し始めたが最後、もう走り続けるしかない。

 

そして敵は迷宮や迷宮に潜むモンスターだけでなく、新たな道を切り開くことに異議を唱える者も大きな障害として立ちふさがる。極限状態でやっとの思いで築き上げた秩序やルールを重視するリーダー的存在の登場人物は自分達の秩序が崩されるとして主人公達の暴走を憎む。確かに秩序を統べる者としては、主人公達の存在はとんでもない反乱分子だろう。だがそれは一生迷宮の居住区で留まることを意味している。果たしてどちらが正しいのか?それは分からないが、何もしないより未来よりはマシかもしれない…だからこそ主人公達は走り続けるし、その無鉄砲さが世界を切り開くのである。そして彼らは謎の病原菌によって崩壊した外の世界と、WCKDという組織が免疫薬を作ろうとしていて自分たちは実験台だったことを知ることになる。果たして彼らはこの迷宮の外の世界をどのように生きるのかは続編に描かれるわけだが、今作のド直球なストーリーは個人的にかなり好印象だ。

 

また荒廃した近未来のような巨大迷路の壁に囲まれた安全地帯のビジュアルは「進撃の巨人」を彷彿とさせる。迷路に潜む謎のモンスターは巨人で、迷路の探索を行うランナーは調査兵団といった感じだ。そういえば主人公トーマスの見た目もちょっとエレン・イェーガーに似ているかもしれない。そんな「進撃の巨人」を読んでいる時に感じる切迫感や閉塞感を今作でも感じることができる。問答無用に若者達は死んでいくし、危機的状況が持続していくことへの疲労や切迫した状況にも息つく暇もない。そこが若者にウケた要因だろう。今作が長編初監督であるウェス・ボールが製作した「RUIN」という短編では、今作で見られるような荒廃したようなビジュアルや近未来的ギミック、そして疾走感を意識した作風が印象的でこの作風を買われての起用であることが分かる。

 

また同じヤングアダルト小説原作の「ハンガー・ゲーム」や「ダイバージェント」とは違い、主人公の甘ったるい色恋沙汰や三角関係もない。居住区には男だけでの生活だし、トーマスの過去を知っているテレサというトーマスと恋仲になる予感のあるキャラクターが登場するが、基本は男ばっかりの熱い友情がメインなのも個人的には入り込みやすい。それにしても男ばかりの居住区に女が一人やってくると聞くと…どう考えてもいわゆる「薄い本が厚くなる」ような展開になるとしか思えないのだが、さすがにそれはないようである(笑)男同士の友情メインなのでブロマンスが好きな人にとっては最高の映画だろう。

 

そして若手キャスト陣がもたらすフレッシュさも魅力だろう。主人公を演じるディラン・オブライエンは見た目は地味な感じがするものの、走る姿はとてもエネルギッシュでパワフルである。また脇に回る主要登場人物もかなり魅力的だ。独特な顔で秩序の忠実さを主張するウィル・ポールターはこんなにワイルドな役もできるのかと感心したし、主人公を支えるトーマス・サングスターの好青年ぶりも印象的だ。なんと「ラブ・アクチュアリー」でリーアム・ニーソンの息子役だったというのを見た後に気付きとても驚いた。あと主人公と共に迷路を駆け巡るランナーであるキー・ホン・リーもなかなか二枚目でかっこよかった。というかなかなかこういうキャラは見ないので新鮮だ。一方、ヒロインのカヤ・スコデラーリオはほぼ活躍する場面がないためにあまり華がない。続編での活躍を期待したいところだ。また今回スコアを担当したジョン・パエザーノも今後要チェックだろう。

 

特に深い内容でもないが、何の捻りもなく単純にわくわくさせてくれるこの映画をきっかけに「映画って楽しいかも!」と思える若い人も増えそうな予感がした。そして続編か気になる終わり方なので次回も楽しみだ。

 

続編のレビューはこちら

marion-eigazuke.hatenablog.com