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~とにかく走る若者達に過酷な世界と謎は付き物?~「メイズ・ランナー2: 砂漠の迷宮」ネタバレレビュー

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作品概要

突然謎の巨大な迷路に閉じ込められた若者たちが、今度は自分達を迷宮に閉じ込めた謎の組織WCKDから逃げるために砂漠でのサバイバルを強いられることになる同名のヤングアダルト小説を映画化したシリーズ第2作。出演はディラン・オブライエン、カヤ・スコデラーリオ、トーマス・サングスター、キー・ホン・リー、ナタリー・エマニュエル、ジャンカルロ・エスポジート、エイダン・ギレンパトリシア・クラークソンなど。監督は前作に引き続きウェス・ボール。

 

 

点数:3.5点(5.0点満点、0.5刻み)

※ネタバレを含みますので読まれる方はご注意ください

 

 

迷宮という特別な状況下を失ってしまったものの、疾走感を重視したチェイスシーンやアクションの質は全く落ちていない。だがあまりにも語り口が不格好で次作への期待感を煽るという意味では少々パンチ不足に感じでしまう1作だ。

 

前作でトーマス達は謎の巨大迷宮から脱出することが出来たわけだが、彼らに待ち受けていたのはクランクと呼ばれる感染者達がうごめく文明が崩壊した世界と自分達を迷宮に閉じ込めた組織WCKDだった。彼らは最初、主人公達を救出しにきた別組織のように振る舞っていたが、裏では相変わらず免疫を持っている若者を実験台にしていた。その事実を知ったトーマス達は施設から逃げ出し、WCKDと敵対する軍組織ライト・アームが潜んでいると言われる山を目指しクランク達がうごめく砂漠を突き進む…

 

そう、今回の舞台は迷宮ではなく砂漠である。確かに砂漠というロケーションは過酷そうだし、邦題では頑張って迷路っぽさを出すために「砂漠の迷宮」なんてサブタイトルがついているが、やはり前作の迷宮と比べると砂漠というロケーションにそこまで魅力を感じない人も多いのではないかと思う。それでも荒廃しきった街並みや橋などウェス・ボールらしいビジュアルで奮闘してはいるのだが、それでもやはり足りない。そこで今作では前作のロケーションの魅力がない分、今作では疾走感重視のチェイスシーンとゾンビ映画らしさを取り入れてくる。

 

前作でもとにかく走っている場面が多かったが今作でも健在だ。WCKDの施設からの脱出から始まり、錆びれたショッピングモールではゾンビ化した感染者=クランクから逃げ、雷から逃げるためにも必死に逃げ、さらに凶暴化したクランクとも倒壊寸前の高層ビル内で落ちそうになりながらも逃げ続ける。ただ逃げるだけでなく時には友人をかばって立ち向かう、廃墟化した高層ビル内では登る、下る、落下など危機の連続で全く飽きさせない。実はこのシリーズ、謎の世界観よりも「若者がとっさに機転を利かせて勇気を振り絞ってとにかく走り続ける」ことがメインなのではないだろうか。

 

また主人公達の前に立ちふさがるクランク達もなかなかグロテスクでその姿もきっちりと見せてくれるし、凶悪化したクランクはテレビゲーム「The Last of Us」のクリッカーを連想させるような醜悪で嫌悪感を抱く気持ち悪さで大変よろしい。突然動き出すクランク達には何度も驚かされたし主人公達を集団で追いかける姿も恐ろしかった。ただ砂漠で謎の組織から逃げ続けるだけの映画だと思っていた人からすれば、まさかゾンビ映画になるとは思ってもみなかったことだろう。はっきり言って同じ砂漠を舞台にしたゾンビ映画バイオハザードIII」よりも痛快で恐ろしいと感じた。

 

だが物語や続編への布石はあまりにも盛り上がりに欠けるし納得のいかない部分も多い。基本的に展開が逃げて誰かと出会ってまた逃げて戦うのワンパターンで構成されているので正直飽きてくるし、同中に主人公達の仲間になる生き残りの人間集落のリーダーもさっきまで主人公達を脅しているかと思ったら急に主人公の仲間になっている、トーマスに変なお酒を飲ませて意識が朦朧となるシーンの意図など意味不明で無駄な展開が多く感じた。

 

そして最も意味が分からないのが、主人公とヒロインの行動理念だ。WCKDの施設から逃げ出すときも仲間になぜここが危険なのかの説明をほとんどしないないまま飛び出すので仲間達から怪訝な目線を向けられるし、人体実験をしているなんて言われていたがただ採血しているだけっぽいようにしか見えない。またWCKDの計画というのも世界を滅ぼす訳じゃなくてウィルスの特効薬を作ろうとしているとしか現時点では明かされないのでどう考えてもトーマスの主張がでたらめに見えてしまう。トーマスの謎が今後彼の中で大きな障壁となる、あるいはトーマスに大きな運命が課せられて真の意味で仲間を導く存在になるならばこのモヤモヤも晴れてくれるのだけど…実はトーマスがWCKDの謎や所在をライト・アームの前進組織に漏らしていたという真相と謎だけでは正直次作へのフックとして弱い。

 

一方ヒロインのテレサは主人公の秘密を知っているはずなのに微妙にはぐらかしてばかりで、最終的にライト・アームの基地についた主人公達の場所をWCKDに知らせるという裏切り者のようにしか見えない行動を取るのである。さっさとトーマスの謎について知っていることを言えば解決する話なのに物語の都合で話さないようにしか見えないのである。もはや今作から登場し途中までトーマスと共に冒険することになるブレンダや、前作から登場するニュート、最後にWCKDに連れ去られてしまうミンホのほうが立派にヒロインしていると思う。原作でもテレサはこんなにウザいキャラクターなのだろうか?

 

このことから言えるのは、前作では主人公達の無鉄砲さがきちんと生きていたのに今作ではむしろ主人公の魅力を消してしまい、ヒロインのポジションは相変わらずぞんざいな扱いのままで、次作への伏線や謎の提示の仕方が下手くそ過ぎて、壮大な世界観や最終作への期待感を自ら下げているのである。そこはもうちょっとどうにかすることができたと思うのだが…

 

役者陣では前作から登場しているメンバーはもちろんいいのだが、今作ではエイダン・ギレンやジャンカルロ・エスポジートなど大人組の役者陣が脇でいい味を出していると感じた。あとはブレンダ役のロラ・サラザールが印象的だった。またジョン・パエザーノのスコアも相変わらずかっこよかった。

 

正直、3部作の2部作目としても、単体の映画としても作りとしては杜撰な部分が目立っていると言わざるを得ない。だがこのシリーズの方向性的とも言える魅力は今回ではっきりしたし、楽しかった部分もあるので一概につまらないとは思わない。まだ第3作も残っているし、次回も期待して待ちたいと思う(第1作目→第2作目のときの期待値よりも低い期待値でだが)。

 

前作のレビューはこちら

marion-eigazuke.hatenablog.com