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~アタシ達、腹割って話せばダチでしょ?~「ピッチ・パーフェクト」ネタバレレビュー

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作品概要

前年の大会で無様な姿を晒してしまった大学女子アカペラグループ「バーデン・ベラーズ」が個性的な新たなメンバーを加えてお互いに衝突しながらも全国大会に挑む音楽コメディ。出演はアナ・ケンドリック、アンナ・キャンプ、ブリタニー・スノウレベル・ウィルソン、アレクシス・ナップ、エスター・ディーン、ハナ・マエ・リー、スカイラー・アスティン、ベン・プラット、アダム・ディヴァイン、ジョン・マイケル・ヒギンズ、エリザベス・バンクスなど。監督はこれまで舞台の演出や監督として名を馳せてきたジェイソン・ムーア。

 

点数:4.5点(5.0点満点、0.5刻み)

※ネタバレを含みますので読まれる方はご注意ください。

 

 

個性的な女子達がぶつかり合いながら自分のすべてをさらけ出して本当の友情を作り上げていく過程は観客の爆笑の渦に巻き込みながら見る者を熱くさせる。そしてそれを支え彩るアカペラパフォーマンスの興奮も忘れられない。

 

やはり男女関係なく友情物語というのは様々なドラマがあって面白い。しかもただの綺麗事では終わらない汚い部分が含まれると、更に面白さが増していく…今作もそんな映画だ。前年の全国大会で緊張のあまり観客にゲロを吐いてしまうという黒歴史を作ってしまった部長オーブリー率いるバーデン・ベラーズはリベンジを果たすべく、主人公のベッカを含めて個性豊かな新メンバーを加えて再始動する。だが主人公のベッカが持ち込んだ新しい曲目やアレンジに対し、オーブリーは伝統にのっとった曲目やアレンジにばかりに固執し、チームの雰囲気が徐々に険悪なムードになってしまう。それでもなんとかチームとしての体裁を整えてきたバーデン・ベラーズだったが、ベッカが本番中に勝手にアドリブでアレンジしてしまったせいでオーブリーは彼女を追放し、他の部員にまできつく当たってしまう。

 

そうして今にも崩れそうな均衡が遂に崩れ、互いに自分の個性や考えをさらけ出す出して大喧嘩、更に泥沼化して文字通りキャットファイトをゲロまみれで繰り広げるまで悪化してしまう。定番だけど伝統を守るべきだ、でも時にはリスク覚悟で新しいことにチャレンジするべきだと意見がぶつかり合う。それに乗じて自分の秘密を暴露する人までいてもうカオスである。だがこの喧嘩から誰もがチームやメンバーのことを考えているということが分かる。ベッカは自分の個性を生かして新たなチームの魅力を引き出したいと思っているし、オーブリーも悪気があってきつく当たっているわけじゃなくリーダーとしての責任感が彼女を暴走させただけだし、他のメンバーも真の意味で打ち解けたチームでありたいと願っている…そうして彼女達は冷静を取り戻してきちんと自分のことを伝え合い、チームとして1つになることで、新たな魅力を自分達で開花させるのである。

 

また個々のキャラクター性がいい感じにコミカルで、平然とゲロも出てきて女子=おしとやかさのイメージをぶち壊しながら展開されるので見ていて笑いが止まらないし爽快だ。そこにあるのはありのままの女子達だ。そりゃ女子だってゲロだって吐くし下ネタ、暴言だって吐く。変に着飾った綺麗な女子像を提示するだけの映画にはない友情や女らしさという本質が見えてくる。このような快感を味わったのは「ブライズメイズ」以来だ。そしてありのままの自分や秘密をチームを打ち明けることで、メンバーの新たな一面やアイディアを見つけ、そこから真のチームが完成するという王道な展開は誰だって熱くなるというものだ。

 

またライバルである男子アカペラグループ「トレブルメーカーズ」のドラマや存在感、立ち位置も、憎たらしいけど憎めないいい塩梅で面白い。トレブル・メーカーズとバーデン・ベラーズというチームはそれぞれのチームメンバーと恋仲になるのはご法度としているほどの犬猿の仲で、リーダーのバンパーはとことんバーデンベラーズを目の敵にする。たが見ていると、2つのチームの関係はよきライバルとして認め合っているからこその関係だというのが分かる。それはこの映画がトレブル・メーカーズをバーデン・ベラーズがコテンパンに倒すみたいな展開でなく「アカペラって最高だよね、みんなで奏でる音楽って最高だよね」という立ち位置で一貫しているからだ。トレブル・メーカーズに所属するメンバーもコメディリリーフ的で憎めない存在のバンパーに、ベッカに恋してしまい彼女に「ブレックファスト・クラブ」を見せて協調性を気付かせてくれるジェシー、最初はオーディションに落ちてしまうけどスター・ウォーズオタクだけど最後に大きく花開くベンジーなど彼らもまた大きく成長するのだ。

 

そんな彼らのアカペラパフォーマンスは最高にアガるシーンの連続だ。クライマックスのアカペラ大会では、バーデン・ベラーズはそれぞれの個性を発揮しつつ、伝統と新風が見事にマッシュアップしたパフォーマンスで観客を魅了するし、トレブル・メーカーズのパフォーマンスもジェシーベンジーの独壇場だ。他にもお題に合わせて曲をつなげていくアカペラバトルなど見どころ満載なのだが、楽曲のこと知らなくても全く問題はない。ノリノリで楽しそうに歌う姿は見ていれば自然とテンションが上がる。音楽って楽しいという気分にさせてくれるのは「はじまりのうた」ととても似ているだろう。また様々な映画の引用があるのも映画好きとしてもグッと上がるポイントで、前述した「ブレックファスト・クラブ」が物語としっかり関わってくる。(その映画のことを知らなくてももちろん楽しめる、僕もまだ未見である)あとスターウォーズオタクのベンジーが最後に大活躍するというのも見ていて応援したくなった。

 

ただちょっとユルい部分もあるにはある。例えばベッカのルームメイトである韓国系女子の扱いとかはもうちょっと絡ませてあげることができたと思う。あと決勝戦に出場できるようになった驚愕の理由とか、ラストのパフォーマンスで生きるあの低音ボイスというご都合主義スレスレの展開に引っかかる人もいるかもしれない。だが彼女たちのパフォーマンスや友情、絆の熱量の前には霞んでしまうし、ギャグとして見れば違和感は感じない。

 

役者陣ではアナ・ケンドリックのかわいらしさがこれでもかと出ているし(巨乳も!)、サバサバした魅力が輝いている太っちょエイミー役のレベル・ウィルソンや、主人公を加入させて新風を巻き起こそうとするクロエ役のブリタニー・スノウ、ちょっと神経質そうで堅そうな部長オーブリー役のアンナ・キャンプなど個性的なメンバーが揃う。他にもコワモテだけどレズビアンなシンシア役のエスター・ディーンやセックス好きのステイシー役のアレクシス・ナップ、異常に小さな声で怖いことを言うリリー役のハナ・マエ・リーまで個性豊かすぎて愛おしい。他にも憎たらしさ全開のアダム・ディヴァインやノリノリな好青年のスカイラー・アスティン、いかにもオタクっぽいベン・プラットも印象的だし、アカペラ大会の司会者のエリザベス・バンクスとジョン・マイケル・ヒギンズのお下劣な司会ぶりも笑わせてもらった。

 

青春、友情、そしてアカペラの3拍子揃って「アタシ達、最高!」と一緒にテンションが上がる楽しい映画なのはもちろん、一人一人のキャラクターが愛おしく、そんな彼女達の一念発起に熱くなること間違いなしだろう。公開からしばらく経ったが、今でもたまにサントラを聞きつつ、Cupsのリズムを取ってしまうほどに大好きな作品だ。

 

続編のレビューはこちら

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