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頭の中の感想置き場

映画、アニメを中心に感想や想いを綴っていきます

~キアヌ・リーブスが身にまとう孤独と哀愁~「ジョン・ウィック」ネタバレレビュー

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作品概要

妻と死別し、亡き妻からの贈り物である子犬と愛車のマスタングを愛する元殺し屋のジョン・ウィックが、かつて所属していたロシアンマフィアのドラ息子によって愛車と子犬の命を奪われてしまったことに怒り、様々な妨害を受けながらも復讐を果たそうとするアクション。出演はキアヌ・リーブスミカエル・ニクヴィストアルフィー・アレン、ブリジット・モイナハンエイドリアンヌ・パリッキジョン・レグイザモイアン・マクシェーンウィレム・デフォーなど。監督は「マトリックス」シリーズでアクションコーディネーターを務めたチャド・スタエルスキーとデヴィッド・リーチ(デヴィッド・リーチはノンクレジット)。

 

 

点数:4.5点(5.0点満点、0.5刻み)

※ネタバレを含みますので読まれる方はご注意ください

 

 

キアヌ・リーブスだからこそ出せる魅力と雰囲気を最大限にまで生かし、無駄のないアクションを決めていく様は見事であり、ジョン・ウィックを取り巻く裏社会の描写がまたかっこよくもあり笑いを生むという最高に楽しいアクション映画だ。

 

まずこの映画において亡き妻の形見の犬を殺された元殺し屋役にキアヌ・リーブスをキャスティングしたことがとても重要だ。自分の中でのキアヌ・リーブスは脇役より主役で輝くタイプだけど、そこらの俳優とはまるっきり違う独特過ぎる雰囲気を醸し出す人だと思っていて、その独特な雰囲気とはどこか哀愁や影を感じさせ、まるで世捨て人かのような孤独を感じさせる。かつてベンチに座って一人でランチを取るプライベートをパパラッチされていたが、あのなんともいえない哀愁は彼らしい。今作においてはそんな哀愁や孤独が最大限に発揮されている。

 

愛する妻を病気で亡くし、途方に暮れたまま日常を過ごすジョン・ウィックには、何をしていても妻を亡くした喪失感や孤独、悲哀がにじみ出る。ジョン・ウィックと妻の出会いやかげかげのない日常はあまり描写されないが、殺し屋だった孤独な彼の心を癒し、殺し屋をやめて妻との日常を選ぶほどだったのだからジョン・ウィックにとって妻という存在がいかに大きいのかは想像がつく…だからこそその喪失感や悲しみが辛く、自分の命を簡単に投げ出して暴走してしまいそうな気すらしてしまう。そんな彼に妻は自分が死んだ後に孤独に悲しまないようにと子犬が贈られる。妻の優しさが詰まった粋な計らいにジョン・ウィックはまた希望を取り戻しかける。妻の分身のような子犬と不器用な彼の生活はどこか微笑ましい。この不器用な哀愁や孤独を背負った雰囲気はまさにキアヌ・リーブスにしか出せない味わい深さだと思う。

 

だがその希望は儚くもバカなロシアンマフィアのドラ息子によって打ち砕かれ、愛車と子犬の命は奪われてしまう。孤独や悲しみがとうとう怒りに変わり、たとえかつての古巣であるロシアンマフィアを敵に回してでも復讐を成し遂げようと決意する。ここまで見ているとまるで「ラン・オールナイト」を思い出すが、この作品と違うのはかつての仲間を敵に回さなければならないという悲劇性によるドラマは一切なく、良心の呵責すら抱かせないほどに躊躇なく復讐を描くのである。もしかすると「ラン・オールナイト」の主人公を「96時間」シリーズのブライアン・ミルズに置き換えると今作のようになるのかもしれない。だが前述した妻の喪失感によって復讐にもきちんと説得力もある。

 

そして親友である殺し屋仲間の力もあって、邪魔する敵や掟破りな殺し屋も倒し、遂には目的であるドラ息子も無慈悲に殺す。だが親友はロシアンマフィアからジョン・ウィックの暗殺任務を請け負っていたにも関わらずに彼を手助けしてしまったがために、ロシアンマフィアのボスからなぶり殺しにされてしまう。ボスまでは殺さないとしていたジョン・ウィックだったが、ロシアに国外逃亡しようとしていたボスも復讐の怒りに任せて殺害する。この姿はまさに妻が危惧したジョン・ウィックそのもののように見える。だが最後には妻からもらった子犬と同じような子犬を見つけたことによって新たな希望を見出す。ラストショットでのジョン・ウィックはまるで妻と寄り添っているかのようだ。まぁロシアンマフィアのボスはドラ息子を放っておけば殺されることはなかったとかあんなに強いのにドラ息子の襲撃されてしまうジョン・ウィックなどツッコミたい部分はあるがそこはご愛敬だ(笑)

 

また躊躇なく復讐を描くことでアクションに対して主力を捧げることに成功する。決して無駄のない動きで的確に敵を無力化していくガン・フーアクションはお見事としかいえないほどに洗練されていて最高にかっこいい。映画的にバンバン人を殺していくので派手に見えるが一つ一つの所作は現実的な格闘術のようで決して荒唐無稽ではない説得力があって、絶対に命を奪う時は頭に一発を入れて敵の無力化含めて1人あたり2発で倒すなどきちんと理にかなったアクションが展開されていると感じさせる。ちなみにいろんな人が数え上げたキルカウント動画を見てみるとジョン・ウィックは今回の復讐で最終的に大体70人~80人ほどは殺していると見積もることができる。なんと恐ろしい男であろうか。

 

そしてジョン・ウィックが恐ろしい男であることをロシアンマフィアのドラ息子以外は誰もが周知の事実として受け入れているのもある意味可笑しい。ロシアンマフィアのボスは息子に対して「なんという男を怒らせたのか」と息子に鉄拳を喰らわせるし、盗んだ愛車を持ち込んだ修理工場の社長にも怒られて殴られる始末…冒頭からBMWに乗っていかにもバカそうなヒップホップを爆音で流しながら登場というどうしようもないドラ息子だが彼らがものすごく哀れに思えてくるほどだ(笑)他にもロシアンマフィアが送り込んだ刺客の死体が部屋中に散乱しているのに警官はスルーを決め込む、死体の掃除屋や殺し屋が集まるコンチネンタル・ホテルのオーナーや従業員、同業者のヒットマンなど久しぶりに裏社会に復活した彼に対して懐かしさや尊敬を吐露するなどジョン・ウィックの名が伝説化しているのがもはやギャグに見えてくる。

 

そんな裏社会の設定には殺し屋だけが宿泊することができ、そのホテル内での暗殺仕事はご法度で破ったものには容赦ない処罰が課されるコンチネンタル・ホテルや、ディナーの予約という暗号を用いる死体の掃除屋など厨二心をくすぐられる。他にもまるで「ドライヴ」を彷彿とさせる美しい夜景ショットや最高にクールなタイラー・ベイツのスコアも最高だ。ロシア語の字幕でなぜか太字になる単語があるのもアホらしくて個人的にはツボだ。またキアヌ・リーブス以外の役者陣もとてもいい。ロシアンマフィアのボスを演じたミカエル・ニクヴィストは渋くて様になるし、ウィレム・デフォーの親友役というのもなんか新鮮だ。他にもイアン・マクシェーンジョン・レグイザモなど名優が揃っていて花を添える。

 

 キアヌ・リーブスの哀愁だからこそ成せる喪失感や孤独が、キャラクターに深みを与え、斬新なガン・フーによって新たな復讐劇アクションを生み出したと言えるだろう。一度この映画にハマったらもっとこの世界観やジョン・ウィックの活躍が見たくてたまらなくなることだろう。